赤福餅の消費期限改ざんの問題は皆さんも記憶に新しいだろう。創業を再開した赤福のホームページには本社工場の改善として以下のような改善点が示されてある。
【1】 | 冷解凍工程を物理的に不可能にするため「赤福餅」に関する冷解凍設備は全て廃棄しました。今後は、冷解凍工程を経た「赤福餅」の製造・販売は一切行いません。 |
【2】 | 廃棄品保管室を新設しました。売れ残り品は新設した廃棄品保管室に一時保管した後、一括して外部委託先により、全て廃棄いたします。 |
今まであった冷凍室をなくした。そして廃棄品保管庫を新設して全て廃棄するという説明である。これで確かに消費期限の改ざんの問題は回避されるのだと思う。
だが、ちょっと違和感を感じないだろうか。
基本的に予約販売で無いかぎり、売り切れを出さない量を作るには必ずロスが出てしまう。いわゆる水商売というものであり、平均してどのくらい出るという予測を出来るだけ正確なものにしてロスを少なくするというのが食品流通業の知恵の出しどころとして鎬を削ってきた部分でもある。
でも、赤福の商品は1ヶ月たっても食べられるほどの品質である。 冷凍すればもっと持つであろう。その餅たちがどんどんと捨てられていく。食べられるものをだ。
子どもたちには「食べ物を大切にしなさい」という大人がこれでよいのだろうか。
こんな事を言うのはピュアなお花畑ちゃんだと思われるかもしれない。しかし、現実に実践している企業もある。イギリスのプレタマンジェ(現在はマクドナルドが主要株主)の試みは参考にできるかもしれない。
Pret operates a bit like a restaurant. Every Pret has its own kitchen (except for one or two of the tiny ones). You won’t find ‘sell by’ dates on our fresh sandwiches and salads. We don’t sell ‘factory’ stuff. We offer our food to charity at the end of each day rather than keep it over.
プレタマンジェのオペレーティングはレストランに似ています。全てのプレタマンジェの店舗は店内に厨房を持っています。(いくつかの小さい店舗は除きます)。 私たちの新鮮なサンドイッチやサラダには消費期限がありません。私たちは工場のようなところではないのです。 作られた食べ物は次の日にまわすのではなく、チャリティ団体に寄贈しています。
その日のものはその日のうちに。それは確かに理想である。しかし、作りすぎたものを捨ててしまうというのはやはり従業員としても良心の呵責に苛まれるのは確かだ。もしプレタマンジェがその日のサンドイッチはその日しか売らないと宣言して、残ったら捨てているということだったらどうだろう。 ちなみに他の書籍などによると、サンドイッチはホームレスの待避所などに贈っているそうである。
冷凍食品が最近文字通り冷たくあしらわれている。しかし、冷凍することで食品のロスを減らすことが出来るのであれば地球環境や世界の食料事情の緩和にも役に立つ。なんといっても食料自給率が3割台といいながら、食品産業の食品廃棄量は年間11,352,000トン(2006年:農林水産省統計)もある。高効率・高付加価値を追求することで成長してきた産業界だが、今まさに岐路に立たされている。
消費期限を欺いて経営効率を高める手法は許されるものではないが、だからといって食品ロスを低くするための努力、食べ物を使い切るための方法論までもが否定されたわけではない。
改ざんをやめるか、食品ロスを増やすかという二者択一の選択ではなく、第三の道を見つけ出すのが経営者の役目であり、それが今注目をされている社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)としての経営者の戦略の立て方なのではないだろうか。
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