一年前のバレンタインデー、アメリカの北東地域を寒波が襲った。
その寒波の余波でジェットブルー航空が1000機以上もの大量の欠航を出す事態が起きた。他の航空会社は悪天候を予想して事前に顧客に欠航を伝えていたが、ジェットブルーは「どれだけ遅れても欠航はしない」というサービスで顧客を獲得してきた新規参入の格安航空会社であることが災いしたのか、欠航のタイミングを見誤り、このような事態となってしまった。さらに、低コスト運営のための効率的な人員配置が欠航のために大幅に狂い、欠航便を増大させる結果をもまねくこととなった。
飛行機を利用する者にとって、天候不良による欠航はある程度織り込み済みのところもあるだろう。サービスの品質とは関係が無いという考えもあるかもしれない。しかし、ジェットブルーはあらかじめ欠航を伝えて顧客を帰宅させた各社の中にあって、航空機の中に何時間も顧客を閉じ込めてしまうといった失態を演じてしまったのだ。人為的なミスといっても過言ではないだろう。
ジェットブルーはこの困難な事態に対し、真摯に迅速に対応を行った。
Our promise to you,
CEOであるデビッド ニールマン(David Neeleman)は、2月19日、Youtubeに「Our promise to you」というビデオメッセージを投稿した。そこで、今回の困難な事態に対し、会社がどのような対策をとるのかを3つの約束として発表した。
もちろん、マスメディアでの記者会見なども行われているが、このインターネットを使ったダイレクトなCEOの訴えはジェットブルーの顧客はもとより、従業員、そして株主などのステークホルダーへ大きな安心感をもたらしたのは間違いないだろう。
さらに登録されている顧客リストのEmail宛てにはこのような書き出しのメールが届けられた
Dear JetBlue Customers,
We are sorry and embarrassed. But most of all, we are deeply sorry.
出展URL http://babygap07.exblog.jp/5589484/
上記ブログの著者も書いているが、今アメリカで一番怖い企業のリスクはreputation riskだろう。つまり評判に対するリスクだ。これはアメリカだけではなく日本でも全く同じことが言える。インターネットの発達によって、情報が瞬時に不可逆的に広まってしまう現在、評判の企業経営におけるリスクは非常に高くなっている。そして、昨年から続く食品の不祥事でも分かるとおり、その評判のリスクというのは不祥事を起こしたことよりも、どのように対応したかによって起こるという事を知らなければならない。
アメリカには「レピュテーションマネジメント」という分野が確立されている。評判をマネジメントするということだが、これは決して評判を操作することで管理する手法ではない。評判というのはコントロールできないものだからだ。
今回ジェットブルーがインターネットを利用して実践した、評判をマネジメントする手法というのは
1.全ての情報を包み隠さず公開する
2.その情報に対し、解決策・対応策を提示する
3.それを間接的なメディアでなく直接的なメディアであるインターネットを通じて行う
といういたってシンプルな3点だ。
1の効果は「物語に枝葉が付くことを防止する」ということ。情報が無いと逆に人々は色々な不安感から妄想を抱くようになる。例えばジェットブルーの経営が危ないのではないかとか、従業員の数が足りないのではないかとかそういった根拠の無い噂話を蔓延させる元となってしまう。間違いの無い情報を伝える事によって、噂が真実とは異なるという事を明示すればいわゆる「都市伝説」化を防ぐ事ができる。
2は企業姿勢のアピールだ。ただ謝るだけ、ただ現状を報告するだけでは何も始まらない。あと何時間後に記者会見を行うといった情報にもこんな時には価値がある。さらにこれからどうするのかというのを出来るだけ迅速に伝達しなければならない。
3はやはりマスメディアというのはセンセーショナリズムと紙一重であり、より重大な事件、よりショッキングな事件に見せたいと思うものである。企業側の伝えたい内容と、実際に最終ユーザーに届く内容との間に差異が無いとはいえない。もちろん、広く情報を伝えるにはマスメディアは非常に重要なパートナーであるが、やはり直接コミュニケーションが出来る手段を企業が持つことが、媒体による歪曲を防ぐ最大の防御策となる。
現在、日本の不祥事発覚の場合
http://www.jti.co.jp/JTI/apology.html
上記JTのように、トップページに謝罪文を掲載するという形が一般的だ。しかし、経営者の顔の見える経営を推進するのであるならば、経営トップが本当に真摯な態度でインターネット上からビデオで訴えることも有効な手段ではないだろうか。本当に真剣なビデオに対し、茶化されるような事は無い。顧客や株主に「ああ、この人に任せておけば安心だ」と言わしめるリーダーが今企業のトップには必要なのではないだろうか。
ジェットブルー航空 http://www.jetblue.com/ (英語)
Wikipedia(ジェットブルー航空) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E8%88%AA%E7%A9%BA (日本語)
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