佐藤尚之氏による「明日の広告」という新書。友人の勧めで読んでみたので読後感を書き綴ってみる。
最近のテーマであるコミュニケーションの方法として具体的な事例も交えて分かり易く書いている。テーマはやはり消費者の行動が変わったこと(AIDMAからAISAS)だ。
10年前に比べて400倍の情報に触れているという調査結果を引用しながら、その情報過多の世界でいかにコミュニケーションするかについて解説した良書だ。
テレビCMについてもかつてのように皆が見てくれる時代ではなくなった。ただしテレビCM崩壊といわれるように役に立たなくなったわけではない。今こそホリスティック(統合)マーケティングの視点が必要だというのが主旨だ。
このような流れについて、コミュニケーション全てが変化しているという幻想を抱くことにも警戒感を筆者は抱いている。特に子どもとお年寄りについては今までのマーケティング手法がまだ主流であることを強調する。新しく改革しなければといって全てをその方向に向けてしまうと、これら重要なターゲットを見過ごしてしまうことになる。
もう一つマーケティングの盲点についての指摘もあった。単純な統計データ(例えば高校生は携帯を使う)というのに惑わされてはいけないということだ。もう少し突っ込んでそのメディアの利用実態をつかまなければ本当にリーチすることは難しいという点も示唆に富んでいる。
最終章には佐藤氏が手がけたスラムダンクの読者への感謝広告キャンペーンについて現場の雰囲気が熱く伝わってくる文面でその面白さを伝えている。
消費者は既に情報という武器を手に入れた。着飾った広告はもはや相手にされない。非常に疑り深い存在となっている。疑り深いだけでなく実際に情報を得ることも容易になってきている。実際に使った人の体験が分かるから買った後に失敗したくない消費者は体験者に耳を傾ける。そしてその体験を簡単に公に出来るインフラが整ってきている。もはや情報は隠せないし虚飾は通用しないことは昨今のチベット問題を見てもあきらかだ。この変化した消費者とコミュニケーションをいかに取るべきか。そして何を訴えるべきか、今までの成功体験を捨ててゼロベースで考えなければならない。
ただ、統合化が進めば進むほどそのメインプレイヤーの寡占化は進んでいく。地方の小さな広告会社が生き残るにはどうすればよいのか、明日の広告を担えるのはどの企業か、まだ広告業界の課題は多い。
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