アメリカでファブレスメーカー(工場を持たないメーカー)が活躍しているという話を聞いたことがあった。最近の製造業の事情とはどんな状況なのだろうか。
電子機器製造請負サービスはEMSと略される(国際スピード郵便ではない)。メーカーが完成品の仕様書を提示し、その仕様書通りの製品を仕上げて納入するという企業だ。通常のメーカーと違う点は一つ、ブランドを持たないという点だ。
このEMSにはブルーオーシャン戦略が大きく関わっているのではないだろうか。近年、最新技術が消費拡大に直結するという時代ではなくなってきた。電子機器の場合、技術的には成熟しており、新しい革新的な技術が市場を大きく変えるというケースは少ない。大手メーカーも研究開発に余念が無いが、すぐにそれが売上という実りに結びつきにくい時代であると言える。
そこで期待されるのが新たな市場を作り出すブルーオーシャン戦略だ。例えば任天堂のWii。爆発的な人気だが、ここで使われている部品は殆どが既存の技術を応用したものだ。売上と最新技術が結びつかない好例と言えるだろう。
そんな状況下にあって、メーカーとしては売れる商品を作るために、市場に敏感に反応し、市場に新しい提案を次々に行わなければ見捨てられてしまう。自社で工場を持っていればこういった柔軟性のある製品ラインナップがとれなくなってしまう。そこで世界中から完成品の製造を任される工場としてEMSの存在感が増しているようなのだ。
その代表企業が台湾の「ホンハイ」、従来製造請負というと、部品を納入する請負企業という意味合いが強かったが、ホンハイは完成品を生産する能力を備えた工場だ。90年代から企業は生産拠点を縮小廃止し「ブランディング・マーケティング」及び「最先端技術のR&D」に特化し、メーカーのメーカーたる所以である製造という作業を全てアウトソースするという形態が生まれてきている。ホンハイという名前を知らなくても、すでに殆どの人がホンハイの製品を使っているということだ。
もはやEMSの存在抜きに電子機器製造の世界は語れない状況にきている。大手パソコンメーカーの社員が「パソコンメーカーにとって、ものづくり自体はもはやコアコンピタンスではない」と断言しているそうだ。
工場を持たないメーカーが活躍できる土壌が出来たということは、革新的なブランド戦略で新製品を生み出し売上を伸ばす新たなメーカーが出てくる可能性を秘めている。ブルーオーシャン戦略はテクニカルイノベーション(技術革新)の戦略ではなく、バリューイノベーション(価値の創造)の戦略である。つまり、工場を持たない資本の少ない中小企業にもそのアイデアとマーケティング能力で時代を担う製品を生み出せる可能性が高まっていると言える。
私はEMSの存在を背景にそんな面白い企業が続々と生まれてくることを期待している。
ウチの会社もファブレスで製品を製造してます。
投稿情報: shin | 2007/12/08 11:57
OEMだったりPB商品だったり似たようなコンセプトはありますが、EMSというのはまた違った感じですね。
投稿情報: Eric | 2007/12/08 13:40
[this is good] It is remarkable, very good message
投稿情報: Barry Shipp | 2010/04/30 18:41