トップが経営戦略の方針を決めたとしよう。それが正しいものであっても
それを確実に実行する方法論を持たなければ、従業員との意識は乖離し崩壊へと向かう。
興味深い2つの工場の物語。
1980年代のアメリカ。
エレベーターメーカーはオフィスビル供給過剰により国内需要の冷え込みに見舞われた。
競争の泥沼を抜け出すために、大胆な値下げと価値増大を目指したA社はそれを実行するには、今までのバッチ生産をやめ、セル生産方式に移行しなければならないことが分かっていた。
この会社は二つの工場を持っていた。仮に第1工場と第2工場としよう。
第1工場は労使関係が非常に良好で、自ら労働組合を解散するというような模範的な工場だった。
一方第2工場は非常に冷え切った職場で、労使関係は最悪だった。
経営陣は、まず労使関係の良好な第1工場から改革に着手し、その成果を第2工場に見せて
納得させるという方法を選んだ。 それが最も迅速で効果的な方法であり、疑うものはいなかった。
しかし、ふたを開けてみると結果はまったく逆であった。
第1工場は混乱し、コスト・品質の両面で業績が落ちた。
一方第2工場は決定そのものには不服を示したが、新しい戦略を積極的に受け入れ努力を惜しまない姿勢を見せた。
従業員に対する戦略浸透のためのプロセスがこの結果を分けた理由であった。
第1工場では従業員に戦略の意図を伝えず、工場長とコンサルタントが秘密裏に話しを進めていた。
一方第2工場では従業員に戦略の意図を伝え、今改革すべきことであることを伝えていたのだ。
第1工場では、自分たちが今どんな環境の変化に見舞われるのかわかっていない。
だから、自分が解雇されるのではないか、不当な扱いを受けるのでないかという心理的な抵抗が起こった。
第2工場では戦略を伝えていたために、自分たちが今何をすべきかが分かっていた。
第2工場は公正なプロセスを踏んだ。つまり
従業員の知性や感性を重んじ、信頼と熱心な関与を行う事で戦略の実行に自ら進んで協力する。
第1工場は公正なプロセスを踏まなかった。つまり
従業員の知性や感性を軽視し、不信と憤りを従業員に感じさせ、その結果戦略の実行を拒否される。
改革の重要性が従業員に伝わっているだろうか、積極的に従業員からの声を聞いているだろうか。
関与・説明・明快な期待内容という互いに支えあう三つの要素を肝に銘じ改革に進んでいこう。
※参考文献・・・『ブルーオーシャン戦略』 W.チャン.キム+レネ.モボルニュ著 有賀裕子 訳
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