PRの仕事には積極的な販売促進のためのPRと、危機管理としてのPRがある。
1月11日のニュースでその2つが同時に起こった。
不二家が洋菓子販売を休止、「ほかにも不適切製造」と発表
http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20070111AS1G1101M11012007.html
納豆:TV番組でダイエット効果紹介、売り切れ相次ぐ
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070111k0000m040134000c.html
危機管理広報としては、出さない努力よりも、迅速に情報を提供し、いかに影響する時間を少なくするかというところが重要となる。とうぜん不祥事を肯定することはできないが、それが企業に与えるダメージをどれくらい深くするかはその広報戦略に影響される。
不二家のニュース。今回は社内チェックをした際に発見された社内の問題点を11月から2ヶ月間表にださなかったという点が記事の扱いを非常に大きくした。確かに11月の報告の時点で問題点が分かっても、それが社内で処理されて消費者に影響を及ぼさなかったとすれば乗り切れたのかもしれない。
しかし、今の情報のスピードとネットワークの広がりは経営幹部の想像を超えているのだ。今の正しい戦略としては、報告の時点での正式発表とそれに対する対策の結果報告。
これを適切なタイミングで勇気を持って行うべきであった。
そうすれば、今回のような報道のされ方はなく、経営への影響も最小限に食い止められたのだとおもう。
むしろ、社内から膿を探し出し自ら公表し改善した勇気ある会社としての賞賛を得られたかもしれない。
現場の人としては絶対に表に出したくないと思ったの分からないではない。記事にも「雪印の二の舞になるのを恐れた」との記載もあった。
情報はもはや隠せない
肝に銘じたいものだ。
次に納豆品切れのニュース。今回はTVでのPRによって特定の商品が一気に売れ出すという現象だ。最近このような動きを消費者がとることが多い。大衆というのがいなくなり、全員が同じ方向になびかなくなったといわれる事が多いが、なぜそのような動きを見せるのだろうか。
確かに、各人にはそれぞれ多様な生き方があり、ライフスタイルも違う。同じような広告を同じような人々に出しても聞かなくなっているのも事実だ。人々は自分の興味のある分野には非常に時間もお金も労力も費やすようになってきた。
しかし、コミュニケーションの道具として考えてみると、誰もが知っている情報というのは会話のきっかけとなる重要なツールなのだ。これを人々が失ったわけではない。いや、失うことはできないはずだ。
そこで登場したのが、いわゆる「押さえとしての情報」である。
一部のダイエットの専門家及びダイエットマニアは納豆の効果についてすでに知っていただろう。ただし、それは一般には知られることは無かった。
なんでも、その道の最先端を行く人には憧れを持って接する。消費者も同じでダイエットの専門家に対しては非常に憧れをもって接することになるのだ。
そこで、効果的なPRを行うことにより、マニアな商品が一気にメジャーな商品に変貌を遂げる。
ライブマーケティングの著者である田中氏が提唱する「T型志向(登録商標:博報堂)」というキーワードがある。
かつてのピラミッド型のマーケット志向から、各個人が自分それぞれのエッジ(得意とする分野)を持ち、その裾野では「押さえ」として情報が共有される。
そんな世界を描いている。
今回の納豆に関する報道もまさにそのマーケット志向を的確に捉えた販売促進手法となりうるのではないだろうか。
ただし、この「売り切れ戦略」実は非常に危険な面もあわせもっている。もし、戦略的に「売り切れ」を演出し、消費者の渇望感を煽った場合、それが戦略であったと分かってしまった場合のダメージは大きい。
情報は隠せない。この法則は積極的なマーケティングPRにも共通のことが言える。消費者のふりをして企業がマーケティングを仕掛けた場合。ほとんどが失敗しているのもその証左だろう。
2007年からのキーワードとして私は「オネストマーケティング」というのを提唱したい。
銚子電鉄の経営危機を訴える直球勝負のマーケティング
不二家の情報提供の遅れが招いた危機
禅問答のようだが、考えないことを考える必要がある。
ピンチをチャンスに変える、チャンスをさらに活かす。この重要な役割を担うのがまさに「オネストマーケティング」だ。
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