このVOXもそうですが、無料で利用できる商品やサービスというのは巷にあふれています。もちろん従来から無料ビジネスというのは盛んに行われており、いまさら解説することも無いとお考えの方もおられるのではないでしょうか。
そのような従来型の無料サービスを含め、フリーを4つにカテゴリー分けし、<無料>がお金を生み出す仕組みを明快に解説したのが本書なのです。
その4つとは
①直接的内部相互補助
その企業が最終的に顧客から購入という果実を得るために無料の種をまくといった性質のものです。最近行われたマクドナルドの無料コーヒーキャンペーンはまさに典型的な事例です。
②三社間市場
無料で受けるサービスの対価を第三者が支払っているケースです。このVOXも広告掲載によって無料サービスをユーザーに提供していますので、この部類になりますし、テレビやラジオなども典型的なこの型になります。
③フリーミアム
聞きなれない言葉ですが、無料でサービスを提供し、圧倒的なユーザー数を確保した上で、アップグレード版を有料で提供する、またはその中でアイテムを販売する方法です。少しの有料ユーザーが無料ユーザーを支える構図です。グリーなどがその典型ですし、オンラインゲームやオンラインソフトの販売なども同じような性質のものです(広告による収益もある場合は②と③のミックス経済といえます)。このフリーミアム経済の特筆すべき特徴は、その無料サービス上でのユーザーの労働時間(ブログを書いたり、音楽や動画をアップロードしたりといった労働時間)を時給換算すると、オープンソースなどでは小さな国家規模の経済がフリーの中で行われているということです。
④非貨幣経済
対価として、貨幣ではなく評判や名声という目に見えないものを得るタイプの交換経済です。ウィキペディアには数多くの編集者がいますが、彼らは一銭の対価ももらっていません。その記事が注目される、存在を認められるという思いが彼らを突き動かしています。それを多数の利用者が享受しているという構図です。ネット上に様々な有益な情報を書いている人々も同じようなものかもしれません。
<課金コスト>
この本には触れていませんでしたが、フリーにはもう一つ重要な要素があります。それは課金コストの問題です。1円を課金するのと0円との間にはほんの少しの金額的な差しかありませんが、そこには大きな大きな壁があります。
高速道路の無料化の議論でしばしば議題にあがりますが、高速道路を課金する為にいかに膨大なコストをかけているかは皆さんもご存知のことと思います。オンランショップでも課金する場合とフリーでダウンロードできる場合との間には非常に深いギャップがあります。
フリーにすることによって課金コスト(つまり、お金を集めるためのコスト)から開放される。このことによってより多くのユーザーを獲得できれば、そのユーザーがもう一つ上の欲求を持ったときにそのユーザーにアクセスするコストが今度はフリーになるわけです。
マーケティングを行って、ユーザーを見つけ、そのユーザーにお金をもらうという一般的な経済活動から、最近は無料で一気にユーザーを集め、その中で購入意欲のある人だけにアップグレード版を買ってもらうという手法が見られるようになってきました。これがまさにフリーミアムの合理的かつ革新的な方法であるのではないでしょうか。
この本の冒頭にフリーという言葉の定義について触れた部分があります。もともとは自由(語源は同じ氏族の自由な一員、つまり奴隷ではないこと)という意味だったのが、費用からの自由という意味を持つようになり、フリーがタダという意味になったということです。費用という重荷から自由になった人々はこれからどんな世界へ向かっていくのでしょうか。
その大きなてがかりが得られる貴重な書籍であったと思います。
コメント