企業活動のIT化が進んで幾年も経つ。そんな中で先日保険組合職員による着服事件が明るみになった。その額なんと10億円。職員の倫理観を問うのは当然だが、その前に会計の仕組みについてもっとなんとかできなかったのだろうか。
上場支援をしているコンサルタントの方に聞いたことがあるのだが、1000円カットで有名な格安理髪店は上場の際にレジの金額と客数をあわせるための物理的な仕組みを構築しなければならなかったそうだ。それで、座ったら客数が自動的にカウントされる仕組みを導入し、椅子に座った客とレジで支払った客が合わなければすぐに発見できるということで全国に散らばるチェーン店の管理を徹底しているそうだ。もちろん、この仕組みも完璧ではないが抑止効果は高い。
その他、タクシー業界も各種メーターをデータとして把握しており、不正が起こりにくい仕組みを構築している。飲食店もその店は進んでいる。とにかく現金を扱う商売は1円単位でしっかりと管理できることが重要だ。
公共料金についても、支払は窓口での現金払いを廃止するなど改革は進んでいるが、お金の流が俯瞰でき、異常があればすぐに分かるシステムも必要ではないのだろうか。帳簿主義というか、帳簿が合っていれば現金の残高は無視されるといった状況では、不正を未然に防ぐという発想が足りない。
行政は非常に多額のIT投資を行っている。確かにユーザーにとって便利になった面は多々ある。しかし、社内の仕組みを抜本的に変えるITの導入はまだ進んでいないのではないだろうか。税金でまかなわれている行政サービスであるから、納税者が納得する資金管理の仕組みを導入してもらうことが急務だ。
職員が楽に仕事ができることがIT化の目的ではなく、間違いが起こりにくく、不正がしにくい仕組みを構築し、透明性を高めることにIT化の目的を持っていってもらいたい。何のためのITか、それが今問われている。
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