まずは、上の動画を見てください。これはボーカロイドどという歌を生成するソフトウェアで作られた歌にそのソフトウェアのキャラクターである「初音ミク」の3D映像を透明のスクリーンに投影して生演奏を背景に行われたコンサートの様子です。
仮想の人のコンサートに数千人の人が集まったこの現象は、様々な技術・社会情勢が複合的にからみあった新しいトレンドといってもいいでしょう。
偶像という言葉はアイドルの翻訳ですが、まさにこの歌手は偶像そのもので生身の存在はありません。正真正銘のアイドルといえるのかもしれません。この「初音ミク」が支持される理由を順に見て生きたいとおもいます。
<ポイント1>歌を歌うソフトの優秀さ
もちろん、ソフトウェアの優秀さが何よりも始まりです。ヤマハが開発した音声合成技術が自然な言葉を出すことを可能にしたことが後のムーブメントに繋がっていったことは間違いありません。みなさんよくロボットの声といえば平坦なアクセントで無機質なものを想像すると思います。つまり、機械で声を作り出すことは今までその程度の技術力しかなかったとも言えるのです。これが完全に覆されたことが重要な点であると考えます。
<ポイント2>ソフトウェアに人格を付け加えたこと
そのヤマハの技術を使って、北海道の会社が「初音ミク」という人格を付け加えて発売したことが次のステップとなりました。初音ミクという偶像に歌わせたい歌とは。ソフトウェア購入者はそのアイドルがまさに歌って欲しい理想の歌を歌わせることに意識を集中させました。
<ポイント3>動画投稿サイトの登場
ソフトウェアで作られた歌声はニコニコ動画などの動画投稿サイトにアップロードされるようになります。作られた歌が一瞬にして全世界の耳に届く。この動画投稿サイトの役割は決して小さいものではありませんでした。ただし、投稿された動画は容赦の無い批判にさらされます。その中で視聴者の支持を集めたものはまさに理想の歌声といっても過言ではないでしょう。芸能事務所が「作られた音楽」をプロモーションするのとは全く逆のアプローチで、一旦公開された楽曲の中から真に人々を感動させる音楽が選ばれることで、最高のクオリティを手にすることが出来るということです。ですから、売り込み=プロモーションの必要も無いともいえます。
<ポイント4>著作権に対する考え方の変化
製作者が「初音ミク」の二次利用に関して寛容だった点も大きくその存在感を増した理由でした。これによって、様々なアニメ、3D作品が「初音ミク」を主題に作られ、楽曲製作者とアニメーション製作者がコラボレーションすることにより、極めて上質なエンターテイメントが作られていくことになります。
以上のような点から、新しい楽曲作成ソフトは日本のみならず、世界的にもその存在感を増していき、大きな支持を得るようになりました。その結果、大手企業の技術力も合わさって、高度な3D映像をスクリーンに投影して行われるコンサートが実現に至るというわけです。
新しいエンターテイメントはこのようにして生まれてきました。これは他のビジネスにおいても大きな示唆を与えてくれるものではないでしょうか。技術力+ユーザーの創造力+発表する場+作品の二次利用に関する寛容さ+雑多なものから優れたものを選ぶユーザーの目。この力が合わさったとき、とてつもなく大きな力を発揮するという良い事例だと思います。
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